2011.9.9 事務局長談話
憲法違反の前原発言に強く抗議し、その撤回を求める (事務局長談話)
民主党の前原誠司政調会長(元外相)は、9 月8 日にワシントンで行った講演で、国連平和維持活動(PKO)で自衛隊とともに活動する外国軍隊が攻撃を受けた時は自衛隊が反撃できるようにするため、(紛争当事者からの)中立的立場の厳守等を定めた「PKO参加5原則」を見直すことや、“米国その他の国々との安全保障協力の深化にもつながる”として、原則全ての武器・武器技術の輸出を禁ずる「武器輸出3原則」も見直すことなどを求める発言を行った。このような発言は、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」ことを定めた日本国憲法に明白に違反するものである。日本国憲法第9 条を擁護し、その世界的拡大を願う私たちは、政権与党である民主党の要職にある前原氏のこの発言に強く抗議し、その撤回を求める。
2011年9月9日
「九条の会」のアピールを広げる科学者・研究者の会(九条科学者の会)
事務局長 本田浩邦
2010.10.22 事務局長談話
「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」の提言に断固反対する
(事務局長談話)
鳩山政権時に首相の私的諮問機関として設置された「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」が、去る8月27日、「新たな時代の安全保障と防衛力の将来構想」と題する報告書を菅首相に提出した。
この報告書は、これまでの日本の安全保障政策が平和憲法の下で専守防衛と集団的自衛権の不行使を特徴とする「抑制的防衛政策」となっていたこと、また日米同盟における日本の役割も日本の防衛に限定されていたことを反省し、これらはもはや時代遅れであり、今後はこれまで以上に主体的に世界の平和のために取り組む「平和創造国家」を目指さなければならないとしている。
その具体的な提言は以下の通りである。
* 米国の核抑止力を効果的なものにするための非核三原則の見直し
* 防衛生産・技術基盤強化のための武器輸出三原則の見直し
* 在日米軍の安定的駐留と駐留経費の負担の重視
* 量・規模だけでなくその運用能力に注目した防衛力の装備
* PKO参加五原則の見直し(武器使用基準等)
* 自衛隊の任務として他国の部隊の後方支援を認めるための従来の憲法解釈の変更
* 国際平和協力活動に関する基本法的な恒久法の制定
以上から明らかなように、この報告書の言う「平和創造国家」とは、強力な軍需産業を内に抱え、アメリカのグローバルな軍事行動に積極的に加担して自衛隊を世界中に派遣する国家であり、この報告書はそのような国家の形成を目指してこれまで平和憲法が課してきたあらゆる制約を取り払うように提言しているのである。
「平成22年版防衛白書」によれば、この報告書は今後の「防衛計画の大綱」策定の検討材料として使われるという。国の安全保障体制の見直しに再してこの報告書の提言が肯定的に受け入れられるなら、それは文字通り憲法をないがしろにした国家づくり、憲法破壊行為であり、決して許されるものではない。平和憲法を守り、憲法が文字通り活かされる社会を目指す立場から断固反対するものである。
2010年10月22日
「九条の会」のアピールを広げる科学者・研究者の会(九条科学者の会)
事務局長
平野 健
2010.8.20 事務局長談話
衆参両院の比例定数削減計画に反対する (事務局長談話)
菅直人民主党政権は、国会議員の比例代表定数のうち衆院80議席、参院40議席を削減する計画を8月中に党内で取りまとめ、12月までに与野党合意を図ることを明確にした。
このような選挙制度改革は、まず第1に議会制民主主義を破壊するものとして容認することはできない。現在の選挙制度の下でもすでに民意は大きく歪められているが、「死票」がない比例代表定数を削減することにより、各政党の得票率と議席占有率との乖離はさらに大きくなる。例えば、2009年の衆議院総選挙で民主党は小選挙区47.4%、比例代表42.4%の得票率で64.2%の議席を獲得し、共産党・社民党は2党で小選挙区6.2%、比例代表11.3%の得票率で3.3%の議席しか獲得できなかった。ここでもし比例代表80議席が削減されれば、同じ得票率でも民主党の議席占有率は68.5%に増え、逆に共産党・社民党2党の議席占有率はさらに1.8%に減る。こうして少数政党は事実上排除され、民主党と自民党の二大政党に収斂させられる。少数政党の意見も含め国民の多様な意見を国会に反映させ、国会審議を尽くすことが議会制民主主義の本分であり、これを破壊することは断じて許されない。
第2に、なぜこのような改革を行おうとしているのかという、その狙いの点からも容認することはできない。かねてから財界は、自民党と民主党とが構造改革と改憲・海外派兵の推進を競い合う二大政党制を期待しており、事実、民主党は1998年の結党以来、自らを自民党よりも急進的な構造改革推進派として打ち出してきた。その後、民主党は2007年と2009年の二度の選挙で「国民の生活が第一」というスローガンを掲げて自民党に勝利し、政権交代を実現したが、その変化の背後には構造改革と改憲に反対する国民的運動と世論の圧力があった。今年5月末に普天間基地移設問題で沖縄県民・日本国民の意思に沿えなかった鳩山首相は辞任し、代わって菅内閣が発足したが、7月の参議院選挙で消費税増税を掲げるやいなや大敗した。こうした経過は、国政選挙を通じて構造改革と改憲・海外派兵の推進か阻止かをめぐるせめぎあいがなされていることを示しており、ひるがえって今回の定数削減計画が、国会を民意から切り離し、もって国民が粘り強く反対してきた構造改革と改憲・海外派兵を再び強硬に推進する狙いを持って打ち出されていることを示している。
このことは極めて重大な問題である。もし菅政権の比例定数削減計画が実現すれば、今後、国民は重要な意思決定の場面で自らの意思を国政に反映させる術を大きく制約され、強権政治がまかり通ることになってしまう。議会制民主主義を守り、また国民の願いである平和に安心して暮らす権利を守る立場から、この定数削減計画に強く反対するものである。
2010年8月20日
「九条の会」のアピールを広げる科学者・研究者の会(九条科学者の会)
事務局長
平野 健
2010.6.27 事務局長談話
「国民投票法」の施行に反対し、あらためてそ廃止を強く求める (事務局長談話)
2007年5月14日に当時の自公政権により強行成立されられた「日本国憲法の改正手続きに関する法律」(国民投票法)は、公布から3年を経過し、先月5月18日に施行された。この法律について、私たちは2007年3月11日に開催した「発足2周年記念の集い」において、「改憲しやすいように『ハードル』を低くし、運動への規制をかけているのが特徴で、このような法律制定の動きは、(中略)米国とともに『戦争をする国』を作るため、九条改悪をはじめとする憲法改悪を急ぐが故に推進されている」と指摘した。成立から3日後の5月17日には、不公正・非民主的な「国民投票法」の強行成立に強く抗議し、憲法改悪反対の国民的運動の推進を呼びかける事務局長談話を発表した。
その後、2007年7月の参議院選挙、2009年8月の衆議院選挙において、「自主憲法の早期実現」を掲げる自民党は惨敗した。改憲のための論点整理を行うべきとされていた憲法審査会も、全く開催されずに現在に至っている。こうした状況に立ち至っているのは、何よりも明文改憲路線が国民多数の意思からかけ離れているからにほかならない。私たちは、憲法改悪を可能とする「国民投票法」の施行に反対し、あらためて同法の廃止を強く求めるものである。
来る7月11日の参議院選挙に向け、自民党が6月17日発表した「マニフェスト」では、冒頭に「自主憲法の制定」を掲げ、「憲法審査会の始動」と、九条第2項「改正」による「自衛軍の保持」を含む「憲法改正原案」の国会提出を「公約」している。これは、同党が、依然として明文改憲路線に固執していることの明確な表れである。また民主党の「マニフェスト」では、「日米同盟の深化」「PKO活動などでの自衛隊および文民の国際貢献活動のあり方について検討」「自衛隊などの海賊対処活動を継続」「防衛生産技術基盤の維持・活性化を図る」など、事実上の「解釈改憲」につながる政策を打ち出している。さらに民主党の枝野幸男幹事長は参院選後に民主党憲法調査会を復活させる方針を表明した。こうした動きは引き続く改憲策動として見過ごすことはできない。
私たちは、日本国憲法の「明文改憲」 はもとより、「解釈改憲」にも強く反対し、文字通り平和で民主的な日本と世界を作るために、いっそう貢献する決意をここに表明する。
2010年6月27日
「九条の会」のアピールを広げる科学者・研究者の会(九条科学者の会)
事務局長
平野 健
2007.01.05 事務局長談話 教育基本法改悪に強く抗議し、改憲阻止国民運動の飛躍的発展をはかろう 自民・公明両党は、12月15日の参議院本会議で、徹底審議を求める国民世論を押し切って、教育基本法「改正」政府案を強行可決し、「改正教育基本法」(以下「改正法」)を成立させた。私たちは、このような暴挙に強く抗議する。 「改正法」は、異例の速さで12月22日に施行されたが、現在でもなお、教育関係者を中心に、抗議や批判の声明等が出され続けている。それらがほぼ共通して指摘しているのは、今回の「改正」は紛れもなく、日本国憲法の条項(第19・23・26条等)にそぐわない「改悪」であること、世論誘導のために「やらせタウンミーティング」などを組織し、その責任についてもわずかな額を『返上』することでお茶を濁すなどして、強引に成立をはかった、ということである。 私たちは、5月9日の時点で、「改正」案は、「教育の国家統制を推進し、『戦争に協力する国民』の育成をめざすのが重要な狙い」と指摘した。このような指摘に対しては、小泉前首相が5月24日の国会において「(改正案は)他国との協調姿勢をはっきりと押し出しているので、・・・誤解というよりも曲解」と答弁している。しかし、この答弁の欺瞞性は、12月5日の国会で明白になった。すなわち、伊吹文科相と塩崎官房長官は、「改正案は自民党が昨秋まとめた新憲法草案とも整合性をチェックしている」旨答弁した。現憲法第9条2項を「改正」して、「国際協調」のため海外での活動ができる自衛軍を持つ――このような新憲法草案と『整合』する「改正法」とは、まさに私たちの指摘通りの狙いを持つものであることは明らかである。同じ12月15日、自民・公明両党だけでなく民主党と国民新党も賛成して成立した防衛庁の「省」昇格法の中に、自衛隊の海外活動を本来任務化する内容が盛り込まれているのも、いわば新憲法草案の「先取り」と言わねばならない。 2004年6月10日に井上ひさし氏ら9人の識者によって発せられた「九条の会」アピールは、「日本と世界の平和な未来のために、日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、『改憲』のくわだてを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めること」を訴えている。私たちはこのアピールに応えるべく、2005年3月に「九条の会のアピールを広げる科学者・研究者の会」を作り、今日まで種々の活動をしてきた。 今後の活動としては、「改正法」の成立に対しては、その具体化をはばむための活動が必要である。また、前国会で継続審議となった「国民投票法案」を含む改憲手続き法案の成立を阻止することが求められている。 安倍首相は、「任期中の改憲」を繰り返し言明しているが、国民の多くは、政府にそのようなことを期待しているのではない。日本国憲法に盛られた基本的人権の尊重、議会制民主主義の擁護・発展、三権分立といった基本原則を守り発展させることを通じて、平和と民主主義を守り、国民生活を守り、充実させていくことこそが求められているのである。 私たちは、今後とも国民の皆様と固く手をつなぎ、改憲阻止の国民運動を飛躍的に発展させる決意であることをここに表明する。 2007年1月5日 「九条の会」のアピールを広げる科学者・研究者の会 事務局長 片平洌彦 連絡先 FAX 03−3811−8320 |
2006.12.03 参議院教基法特別委員会 委員宛緊急要請書 教育をめぐる数多くの問題について、審議を尽くすことを求めます。 審議打ち切り、採決には強く強く反対します!(要請) タウンミーティングの『やらせ』問題、高校必修科目未履修問題、いじめによる自殺問題、教育における機会均等の破壊・格差拡大問題等々にみるように、教育基本法『改正』案の審議は全く尽くされていません。審議をするほどに、新たな問題が噴出しています。このような段階において、委員会で採決をはかることは到底容認できません。 私たちは、別紙のように5月15日付けで「『戦争に協力する国民』の育成を目指す教育基本法『改正』案に抗議し、その廃案を強く求める」事務局長談話を出していますが、その後現在までの動きは、この私たちの指摘をいっそう裏付けるものとなっています。私たちは、このような基本的立場から、教育基本法『改正』案の審議を尽くしたうえで廃案とすることを求めています。 世論は、「徹底審議」を求める声が多数です。日本経済新聞の11月の世論調査でも、「今国会の成立にこだわるべきではない」が55%と過半数にのぼっています。私たちは、審議が尽くされていない現時点での採決に対し、強く強く反対します。 2006年12月3日 「九条の会」のアピールを広げる科学者・研究者の会 事務局長 片平洌彦 連絡先 FAX 03−3811−8320 |
2006.11.16 河野洋平衆議院議長宛要請書 教育基本法『改正』案を委員会に差し戻し、審議を尽くすことを強く求める (要請) 衆議院議長 河野洋平様 自民・公明両党は、全野党が欠席するなかで、教育基本法特別委員会において、15日に教育基本法「改正」案の採決を強行しました。 タウンミーティングの『やらせ』問題、高校必修科目未履修問題、いじめによる自殺問題、教育における機会均等の破壊・格差拡大問題等々にみるように、教育基本法『改正』案の審議は全く尽くされていません。このような段階において、全野党の反対を押し切って委員会で採決することは言語道断です。 私たちは、別紙のように5月9日付けで「『戦争に協力する国民』の育成を目指す教育基本法『改正』案に抗議し、その廃案を強く求める」事務局長談話を出していますが、その後現在までの動きは、この私たちの指摘をいっそう裏付けるものとなっています。私たちは、このような基本的立場から、教育基本法『改正』案は、委員会に差し戻し、審議を尽くすことを強く求めます。 2006年11月16日 「九条の会」のアピールを広げる科学者・研究者の会 事務局長 片平洌彦 |
事務局長談話 2006.11.15 自衛隊の海外派兵を「本来任務」化し、海外での戦争参加に道をひらく「防衛庁『省』昇格法案」に強く反対する 政府・与党は、「防衛庁設置法等の一部を改正する法律案」(以下「法案」)を国会に提出し、早期の成立をはかろうとしている。11月9日には、民主・社民両党欠席のまま、衆議院安全保障委員会で審議開始が強行された。この法案は、「防衛庁設置法」や「自衛隊法」など関連73法に及ぶもので、マスコミでは「防衛庁『省』昇格法案」などと呼ばれていることにより、防衛庁が「防衛省」に格上げすることが主目的であるかのような印象を与えている。 しかしながら、この法案の主たる目的は、従来は「付随的任務」であった自衛隊の海外派兵を、「本来任務」に格上げし、自衛隊の海外派兵を「恒久的な」ものにしていくことである。そして、武器使用の制約を緩和することにより、自衛隊の海外での武力行使、ひいては戦争参加に道をひらくことである。そのことは、法案提案の「理由」に「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の平和及び安全の確保に資する活動等を自衛隊の任務として位置付ける」と記載されていることや、法案において、「在外邦人等の輸送」や「後方地域支援等」などの際に、武器使用が許容されていることが規定されていることを見れば明らかである。 周知のように、日本国憲法第九条は、国際紛争を解決する手段としての武力による威嚇または武力の行使は「永久にこれを放棄する」とし、「国の交戦権はこれを認めない」と明記している。1954年の参議院本会議では、自衛隊の「海外出動を為さざることに関する決議」が採択された。ところが、1990年代以降、「解釈改憲」によって、「国際平和協力活動」の名のもとに自衛隊が公然と海外に派遣される事態となった。2001年には「テロ特措法」、2003年には「イラク特措法」や「有事関連法」の成立が強行された。2004年にはイラクに自衛隊が派遣され、今も航空自衛隊が「支援活動」という名の戦争協力を行っている。そして、2005年10月公表の自民党新憲法草案では、「自衛軍」を保持し、「国際平和協力活動」を行うことができると明記されるに至った。今回の法案は、まさにこうした「解釈改憲」の一環であり、かつ「明文改憲」の先取りと言わねばならない。 「九条の会」のアピールに賛同し、科学者・研究者の間にその普及をはかることを目的に活動している私たちは、自衛隊の海外派兵を「本来任務」化し、海外での戦争参加に道をひらく「防衛庁『省』昇格法案」に強く反対し、その廃案を求める。 2006年11月15日 「九条の会」のアピールを広げる科学者・研究者の会 事務局長 片平洌彦 |
事務局長談話 2006.10.12 北朝鮮の核開発中止と6カ国協議復帰、そして核兵器の全面禁止の国際協定締結を強く求める 10月9日、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)は、核実験を「安全に成功裏に」行い、この実験が「朝鮮半島と周辺地域の平和と安定を守るのに貢献するだろう」との声明を発表した。私たちは、以下の3点から、この核実験に強く抗議する。第1に核兵器は人類の生存を脅かす大量破壊兵器であり、その廃絶こそ世界の平和と安全にとって必要かつ緊急の課題であり、核実験はそれに逆行する行為であること。第2に、2002年9月の日朝平壌宣言で、北朝鮮は核問題の解決について「関連するすべての国際的合意を遵守する」と確認していること。第3に、2005年9月の「6カ国協議」共同声明で、北朝鮮は「すべての核兵器及び既存の核計画を放棄すること」を確認していること。以上より、私たちは、北朝鮮が今回の核実験実施の誤りを認め、直ちに核開発を中止し、6カ国協議の場に復帰することを強く求める。 私たちはまた、この機会に、日本の政府が、国連の場で、核兵器全面禁止の国際協定締結のために先頭に立って努力することを強く求める。自らは核兵器を大量に保持・配備し、「未臨界(臨界前)核実験」という形で実験を繰り返しながら、他国に対しては「核実験をするな」という国々の「論理」は説得力に欠けると言わざるを得ない。核兵器全面禁止は、唯一の被爆国であり、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼してわれらの安全と生存を保持しようと決意」した、戦争放棄の条項がある憲法を持つ日本の政府こそが、最も声を大にして主張すべきことだからである。そして、その日本の主権者である私たちも、その実現のため、あらゆる努力をする決意であることを、ここに表明する。 2006年10月12日 「九条の会」のアピールを広げる科学者・研究者の会 事務局長 片平洌彦 |
2006.9.25 東京都知事、東京都教育長宛要請書 東京地裁の「日の丸・君が代強制違憲判決」に服し、 控訴断念と「10・23通達」撤回を強く求めます(要請) 東京都知事 石原慎太郎 様 東京都教育長 中村正彦 様 東京地裁の「日の丸・君が代強制違憲判決」に服し、 控訴断念と「10・23通達」撤回を強く求めます(要請) 9月21日、東京地裁は、都立学校における「日の丸・君が代」の強制は、教育基本法第10条(教育行政)と日本国憲法第19条(思想・良心の自由)に違反しているという判決を下しました。 判決は、日の丸・君が代が「皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱とされた」過去の歴史的事実を認定し、これに対し起立・斉唱したくない教職員にまで強制し、従わない者を懲戒処分にすることは、少数者の思想・良心の自由を侵害し、行き過ぎとしています。これは、前記の2つの法律の精神に基づき、市民的感覚にも合致する妥当な判断であると考えられます。 そもそも、「日の丸・君が代」を強制しない、ということは、日本政府自身が国会で答弁していることです。「日の丸・君が代」は、1999年の国会で「国旗・国歌」であると強行的に定められましたが、その際、首相・文相など政府関係者は、「強制しない」ということを、繰り返し述べています。例えば、当時の小渕恵三首相は、99年7月28日の参議院本会議で、以下のように答弁しています。「政府としては、法制化に伴い、国民に対し国旗の掲揚、国歌の斉唱等に関し義務づけることは考えておらず、法制化により思想・良心の自由との関係で問題が生じることにはならない」。今回の判決で認定された「強制」は、まさにこの答弁に反していることは明らかです。 公務員である貴職らは、この判決を、日本国憲法と教育基本法に基づいた司法の判断と厳粛に受け止めて、控訴を断念してこれに服し、違法と指摘された2003年10月23日付けの「10・23通達」を撤回することを強く求めます。 2006年9月25日 「九条の会」のアピールを広げる科学者・研究者の会 事務局長 片平洌彦 |
事務局長談話 2006.9.11 安倍内閣官房長官の「集団的自衛権」容認発言の撤回を強く求める 新聞報道によれば、安倍内閣官房長官は、9月1日に自民党総裁選挙への立候補を表明した際の記者会見において、「日米同盟の機能を向上させるため、個別具体的な例について、集団的自衛権の行使が禁止されている典型的な例にあたるかを検討していくべき」と述べた。そして、5日の記者会見では、このことについて、「現行の(憲法)解釈の中で、あるいは新しい解釈があるのかどうかも含めて検討すべきではないか」と語り、「集団的自衛権」についてのこれまでの政府見解の変更を検討する考えを示した。 「集団的自衛権」とは、同盟関係にある国への攻撃を自国への攻撃とみなして武力で応戦する権利とされていて、このような権利については、日本政府の従来の見解ですら、「憲法上行使は許されない」としてきた。今回の安倍内閣官房長官の発言は、このような従来の政府見解を変更し、「集団的自衛権」を容認しようとするものであり、憲法99条に規定された「公務員の憲法尊重・擁護義務」に背くものと言わねばならない。 安倍氏はまた、9月1日に発表した政権公約「美しい国、日本」において、「『世界とアジアのための日米同盟』を強化させ、日米双方が『ともに汗をかく』体制を確立する」ことをあげている。私たちは、このような「公約」は、日米双方が『ともに汗をかく』どころではなく、『ともに血を流す』危険な道を追求するものと言わざるを得ない。そのことは、直近では、「イラク戦争」の経過と現在(戦争開始後現在までの米兵の死者は2651人と報道されている!)を見れば明らかである。このような公約を掲げ、集団的自衛権行使を容認するということは、まさに軍事同盟条約である日米安保条約を強化し、日本を米国等と共に「戦争する国」にすることにほかならない。 私たちは、この安倍氏の「集団的自衛権」容認発言の撤回を強く求める。 「九条の会」アピールへの科学者・研究者の賛同を募り、その結果を広範な国民に知らせることを目的に活動している私たちの会は、日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、安倍氏の唱導の結果もたらされる危険な未来ではなく、日本と世界の平和な未来のために、いっそうの努力を重ねる決意をここに表明する。 2006年9月11日 「九条の会」のアピールを広げる科学者・研究者の会 事務局長 片平洌彦 |
事務局長談話 2006.5.9 「戦争に協力する国民」の育成を目指す 教育基本法「改正」案に抗議し、その廃案を強く求める 政府与党は、4月28日に教育基本法(以下「現行法」)の「改正」案(以下「改正」案)を決定し、国会に提出した。そして、今国会での成立をはかるため、5月11日に特別委員会の設置を強行した。私たちは、自民・公明両与党が国民との対話を重ねることなく密室協議で準備してきた「改正」案を、特別委員会を設けてまで一気に成立させようとしていることに厳しく抗議する。 「改正」案は、一般のマスコミでも大きく報じられているように、教育の目標の中に、現行法には記載されていない「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」ことを入れる(第2条)とともに、前文においても、現行法の「真理と平和を希求する人間の育成を期する」を「真理と正義を希求し、公共の精神を尊」ぶ人間の育成を期すると変更している(この「公共の精神」は、第2条の教育の目標にも記載)。そして、このような国民の育成のため、教育行政について、現行法の「教育は不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきもの」(第10条)の後半を削除し、国が「教育振興基本計画」を定めて、教育に直接介入できる(第16・17条)ようにしている。 自民党が昨年11月に決定した「新憲法草案」とを重ねてみると、このような「改正」案の狙いは明らかである。「新憲法草案」では、憲法九条2項を変えて「自衛軍」を持ち、海外での武力行使に道をひらく内容になっており、また、現憲法第12・13条の「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に置き換えている。すなわち、「国際協調」の名のもとに、米国等とともに他国への武力介入にも「協調」可能な国を作ることが目指されており、そうした「戦争に協力する国民」「愛国心を持った、国策に積極的に協力する国民」を育成するよう、教育の国家統制を推進することが、今回の「改正」案の重要な狙いなのである。 昨年の総選挙における公約では、自民党は「郵政民営化」を争点にする中で、抜け目なく「教育基本法の改正」をしのばせていたが、公明党の分厚いマニフェストには、そのような記載はされてなかった。「愛国心」を「国と郷土を愛する」に変えた程度で妥協し、このような重大な法案の提出を認めた政党は、国民への公約違反をしているとのそしりを免れないと言わざるをえない。 「九条の会」のアピールに賛同し、科学者・研究者の間にその普及をはかることを目的に活動している私たちは、日本国憲法の改悪のみならず、「教育の憲法」と言われる教育基本法の改悪にも反対し、「改正」案の廃案を強く求め、ここに声明する。 2006年5月9日 「九条の会」のアピールを広げる科学者・研究者の会 事務局長 片平洌彦 |
事務局長談話 2006.2.20 憲法改悪のための国民投票法案に強く反対する 自民・公明の両党は、憲法「改正」のための手続きを定める国民投票法案を、民主党と調整の上、今国会に提出し成立させようとしている。 法案の最終案は未定であるが、これまでに伝えられる与党案は、主要点だけでも、 以下のような重大な問題点を含んでいる。 (1) 最低投票総数の規定がなく、かつ、改憲成立を、最も少ない賛成で改憲が成立する「有効投票の過半数」としている。 (2) 国会の発議から投票までの最短期間を、従来案の「60日」から「30日」にまで短縮している。 (3) マスコミの報道・評論を規制している。 (4) 公務員や教育者の国民投票に関する運動を規制している。 国の基本法であり、国民全体にかかわる憲法の改正を行うためには、改正案につい て国民に充分周知し、国民的な議論を行った上で投票することが必要である。 しかるに、上記のような内容を含む法案を提出するということは、国民への周知をはからず、国民的な議論を封じて、急いで成立させようとする意図があることは明ら かである。 そもそも、このような、民主主義の根幹にかかわる重大な問題点を含む法案が出されてくるのは、憲法改正ではなく、憲法改悪を急ぐ力が働いているからに他ならな い。周知のように、昨年10月に「自民党新憲法草案」が出されたが、その内容は、日本国憲法前文や九条2項などを全面的に変え、「自衛軍」を保持して、米軍等と共に海外での武力介入すなわち戦争に参加することを可能にするなどの内容である。今回の国民投票法案は、平和主義に立脚する日本国憲法を、そのような危険な内容に作り変えるための準備法案であり、私たちは、提出自体を認めることはできない。 「九条の会」アピールへの科学者・研究者の賛同を集め、その結果を広範な国民に知らせることを目的に活動している私たちの会は、日本国憲法を守るという一点で手 をつなぎ、日本と世界の平和な未来のために、いっそうの努力を重ねる決意をここに表明する。 2006年2月20日 「九条の会」のアピールを広げる科学者・研究者の会 事務局長 片平洌彦 |